怠慢作業が失うもの。

先月の話になりますが、3月は転勤などで人の動きも盛んで、私達の業界も大変忙しいのは言うまでもありません。
舞い込んでくるお仕事も、法人・個人様問わず3月末まで希望が殆どです。
その為、私達のスケジューリングも、すごくタイトに組み上げなくてはなりません。

今回は杉並区に3階建14戸の集合住宅を建てたS様の話です。昨年秋口から工事を着工して、3月中旬に引き渡しを受ける予定でした。引き渡しを3月中旬としたのは4月から新生活を迎えるお客様の入居を見込んでいた為です。弊社はこの物件の外構工事と引き渡し前のハウスクリーニングを請け負っており、工程からいえば最後の最後の仕事になります。
元請さんとはそれまで面識がなく、オーナーのS様のお引き合わせで、今回お仕事を頂戴したわけです。
弊社は3月頭からの工事着手を計画しており、外構工事は天気の影響も受けますから、余裕のある工程を組んでおりました。
しかし…。2月の中旬にさしかかった頃、現場に伺い様子を確認したのですが、
「え、これ大丈夫なの?」という工事の進み具合。私の経験からして、明らかに工事がずれ込んでいて、工程通りに進めるのはかなりの確率で厳しい…。
何故このような事態になってしまったのか?
原因はすぐにわかりました。
現場監督が常駐せずに下請会社に任せっきりの状態なのです。
その為、下請会社が思い思いの事情で仕事を進めていた為、わずかな工程のずれが蓄積されてしまい、このような事態を招いてしまっていたのです。
現場監督か常駐していない。
にわかに信じがたい話ですが、こうした現場は決して珍しくありません。なぜこのようなことが起こるのか。やはり何といってもコスト削減です。監督を常駐させれば当然人件費が嵩みます。その為、現場監督は複数の現場をかけもちし、1現場あたりのコストを抑える手法をとるわけです。本来当たり前にかけなければならない費用なのですが、厳しい価格競争に、この部分にメスを入れる会社が存在するということです。


現場監督はオーケストラの指揮者に例えられます。パートパートで、どんなに優れた音色を奏でることができても、指揮者がそれらを束ねて統制をとらねば素晴らしい演奏ができないと同じで、現場監督がまさしく現場で指揮をとらねば、工程通りに仕事が進んでいかないのです。

事の事態にようやく気付いた元請会社も、早速にリスケジュールを作成し、突貫工事に近い形で作業を進めていますが、さすがに3月末引き渡しというわけにはいかず、今月(4月)末になりそうです。
引き渡しを心待ちににしていたS様にとっては、怒りと失望感しかなく…なんとお声をかけたら良いか正直言葉がみつかりませんでした。

弊社もスケジュールを変更せざるを得ない形になりました。正直参りました。他の仕事の兼ね合いもあります。怠慢な仕事が様々な方に迷惑をかけるということ。対岸の火事ではなく、しっかりと教訓にしたいです。

元請会社が被る損失は、損害遅延金だけでなく、「信用」という無形の財産も損なう形になると思います。

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